魔学戦線1 プロローグ【未整理】

今からおよそ1500年間の目録

昔と比べ比較的文明的になった現代においてはより便利なものという思想より個々が求める物をと言う構造へと変化してきている。それ故に誰かに物を教えると言った様な学校という施設は無い、1500年程昔に無くなった。

現存している文献では少ないが、電子機器が人を教育していたらしい。今ではそれもナノマシンとして空気中を漂う小さな記憶媒体からの信号により学習をする。

言うなれば、空気中そのものが脳の拡張となっている。生命のすべてを記憶し共有するそれは宇宙全土に広がる超巨大なノアの箱舟の様な物だ、乗れるのは記録だけなのだが…。

しかしそんな生命の危機もそうある物ではなく、現状の人類史で滅ぶ事が有るとすれば創世神アテナ辺りが大暴れした結果ビッグバンが起こる事くらいだろう。
この世界を語るにはここまでの経緯を語らなければならないだろう。人間として自我を持った機械生命体が出てきたのは950年ほど昔に遡る、昔昔から有ったホムンクルスとは別に今では人工知能生命も人間もさほど変わりなく共に生活をしている。だが一時期は人間達の馬鹿さ加減に嫌気が差したアンドロイドが大量虐殺、などと言った事件も人間が人間を殺す程ではないにしろ有った。

しかしそれも今では体を半分合成強化合金筋で置き換える人もいれば、便利さを求めて脳だけを自宅に起き、栄養剤の海からネットを通し、全身を遠隔操作型の義体として利用している人間もいる。既に知的生命の8割の体はいつからかナノマシンシステムやアンドロイド、そして30~40年ほど前に突如異世界から来たクリーチャー達に置き換わった、そもそも純人間の絶対数自体1億人程になっているのだ。

アメリカや中国、ロシア、日本という国もどうやら有った様で、今彼女が住んでいる廃ビルのある島国は日本に当たる場所らしい、1000年程昔約4度の全世界を巻き込んだ争いが起こったと言う事はここ数千年で10本の指に入る程度には大きな出来事として歴史に刻まれている。

なんの冗談かと思うほどに滑稽な話だが彼らは宗教やそんな小さなことの為に殺し合いを行っていたと言う、私の住んでいる場所はそれに自ら足を踏み入れたがために3度目の争いで国としての形を失った。全くおかしな話だ。今では戦争もネットゲームの世界、愉しむものになっている。
昔話で歌われてもいるが「世界では疑心暗鬼に駆られた人々が戦争をおっぱじめた、始めたのはどいつだ?そう中国だ、アメリカだそして互いのこめかみに銃を突きつけてこう言ったのさ、仲良くしよう」内心では戦々恐々だったろう、そしてこいつを撃ってしまえばうちの国は平和だと考え出したのはアメリカだった。その瞬間核戦争が始まった。

当時の灰色の空と世界中から上がる大量のキノコ雲、昼夜を問わず空は真っ赤に染まり上がりほんの数日で世界の全人口は5億人にまで減少し、生物が住める場所も被害は大きかったものの核弾頭の落下を防ぐことが出来た日本、オーストラリア、北極南極等人が居ないような場所を除き無くなった。空は真っ黒に覆われ世界中の歴史性の高い魔力の源となる様な建造物なども数多く失われたのは非常に痛い出来事だ。
そもそも現代では戦争と言う戦争が起きることと言えば、クリーチャー達が阿修羅の管轄する土地に奇妙なカルト信仰を持ち込んだせいで大量のクリーチャーの信者達と阿修羅の大戦争に発展したりとスケールが違い過ぎる。そんな戦争のような大喧嘩に目をくれていれば微粒細菌テロによるナノマシンの腐食事件、どこかの魔術師がこじ開けたワームホールから新たな物質発見等といったニュースも頻繁に流れてくる程だ。
しかし、今正に数百年の年月が経とうとも空が真っ黒に覆われているのもそのせいかと言われるとそうではない、流石に数百年もすれば空気も正常化されるだけの機能はあるらしい。今待ちを覆っているのは生き物だ、100年に一度の大災害と呼ばれる巨大グモハザードが街を覆い、その空を覆う1000mほどの悍ましい真っ黒な足が高層マンションをこれでもかと踏み潰している今正に最中その最中なのだ。町中はアンドロイドのペシャンコに潰れた残骸や原型の分からない緑の液体の流れる肉片の様なものがそこらかしこに散乱している。

しかしそんなものは気にしてはいられない。21月までに仕上げなければならないナノマシン用の試験薬の仕事が山のように溜まっているのだ。この殆どが文明化し、機械に置き換わる世界になってもこういった複雑なメンテナンスは魔術師の手を借りるしか無いのだ、生憎ナノマシン体には魔術を使うには難易度が高い、と言うのもナノマシン体の歴史が生物の歴史とはだいぶかけ離れている為、エーテルとの互換が若干悪いのだ。そのためナノマシン体が魔術を行使するとどこかしら不調が出たり悪いときには20m四方が跡形も無く消滅していたと言うケースもある。現在では一部のもぐりを除きナノマシン体達は流石に行おうとはしない。
仕事のほとんどが機械に変わった現代で、食は自動で配給される街の仕組みは完成されてはいても報酬などは特に自動化されている訳ではない最低毎月遊べる程の金額はチップに送金されるが、こんな世界でも人、異人、アンドロイド達は文明的な欲求を満たすために商売をする。生きるためで無い分今は気ままでより文明的で親和性に富んだ仕事に変わっている。

今来ている仕事はナノマシン回路の更新作業だ、鉄粉と血液、時間の加速をさせる装置を用い数年前から歴史性を高め神話性を上げた宝石と…そう、アレを忘れていた、先躍から騒がしい巨大グモの牙から分泌される毒が鉄を溶かすのに最も効率的なのだ。巨大グモの毒液には鉄分と交じると化学反応により高熱を発する性質があるのだが、それによってドロドロに溶けた金属を用い様々な造形を作り行う。

これと魔術を組み合わせることで溶けた金属を立体的に組み合わせロクト単位でより細かく複雑な回路を作ることが出来るのだが、この界隈でこの仕事が可能でかつそれを請け負っているのは彼女一人だけだ。その為莫大な資金も集まると同時に今年の1月から21月まで毎日スケジュールは詰まってしまっている。

大して重くもないが腰を上げ巨大グモに登る支度をするとしよう。必要なのは私が製作した飛行バイク、名付けて”とび丸ちゃん”だ、魔導型の反重力装置にエンジンを置き換えジャイロデバイスと電子制御により魔術を電子制御化し重力反転と姿勢制御を同時に行うことが出来る私が製作した最新機器だ。AIを搭載している為会話も可能だ。

まだ民間には流通していないがこれ一台をオークションに売りに出すだけでも20億は稼げる代物だ。特に素晴らしくこだわっているのがなんとこのとび丸ちゃんのグリップにはミュージックプレイヤーを搭載しているのだ!搭乗している際にも曲が聴けると有ってはアンドロイドの奴らも買わない手は無いだろう。音量の波長を上げる事で超振動によりパルス砲台としても利用可能な優れものだ。

そして電動式のワームホールを発生させる魔法装置、名付けてどこでもワープ君104号だ。役40年程の時間をかけ103回のワームホール発生実験の果てに完成させた力作だ。これがまた便利で使いやすいスグレモノで電動ドリルのような見た目だが体内に埋め込んである電子制御用のチップから感覚的に距離を伝えスイッチを押すことで任意の位置にワームホールを発生させることが可能なのだ。

ワープ君にはワームホールの出口に繋がる機構を内部のボトルに備えている、これの試験をしていた際に高等魔術クラッカー集団MCAccsessなる組織のアジトがまるまる消えたと言う様なニュースや空の守り神と呼ばれ、空のリヴァイアサンとまで呼ばれた巨大龍の自慢の角が消滅し怒った龍が全身サイボーグ体の勇者と素手で殴り合いのケンカをしたせいで街がひとつ瓦礫の山になりそこにあったニーズヘッグの宝の山を破壊したが為にウラトラマンも驚きの2体の龍と巨大サイボーグの大戦争勃発、

などと言う近日のハイライトもちらほらと見かけたが、私とは特に関係無いだろう。しかし103回の試験を超えてついにある程度安定した動作をするようになったのがこのどこでもワープ君104号なのだ。
あとはこれによって蜘蛛の毒袋とワープ君の4次元瓶を繋げば巨大グモの毒エキスの抽出が出来る。

彼女は猫耳パジャマを着ていることをついには忘れパンツ一枚と寝巻きと言うスタイルで魔術工房を後にした。

第二節:巨大グモに襲来

先日から巨大グモの軍団が襲来している一帯は今日のニュースではどうやら私が魔術工房にしている元新宿駅廃墟を数時間ほど前に通過、その後元埼玉、アンドロイドの居住地区を踏み潰しながら最後尾を除いて北上中とのことだ。巨大グモは異世界からの漂流物を摂取し、巨大化した個体だとも言われているし、ブラックホール発生実験の際に生じた時空の歪みから過去居た最大サイズの虫達が空間通過の際に分子レベルで書き変わり巨大化したものだとも言われている。

どちらにしろそんなものが100年に一度、必要な物質を大量に運んできてくれていると有っては利用しない手はないだろう。ワープ君104号も今回初お披露目だ、きっと喜んでいるに違いない。

とび丸君に跨り声をかける
「目的地、大体蜘蛛のところ行くからおきてよ、とび丸くん」
ヴゥゥゥンとジャイロ制御機と重力制御魔導回路が音を上げる。制御パネルに顔文字が浮かび上がる。喋られると正直鬱陶しいこと極まりないので全ての会話を基本的には顔文字で行う様に作ったものだ。

「( ̄□ヾ)」

これは何日も動く機会がなく退屈で仕方が無かったという顔だろう。作った私が言うのもなんだがとび丸くんの表情は簡潔過ぎてイマイチ分かりづらい。

「(メ・ん・)」

どうやら”おきて”を後に言ったせいか最初の部分を聞き取れず自分がなぜ起こされたのかイマイチ理解していないようだ。寝ている間にも情報収集と言語野が使える様に改善すべきだろう。

「先日から街中を騒がせている蜘蛛、取り敢えず話はネットに接続して状況を把握してからかな」

とび丸君は名付け親の最低なネーミングセンスに心からつばを吐きながら情報の海へダイブする。自分が寝ていたのは前回起こされた時から換算し役1週間と3日、10日分のナノマシン達が記録した情報を取得する。太平洋の深海から現れ役5日間を通してかつて日本だった場所へと近づいている無数の黒い巨大な影実は100年に一度と言われているが、それは単純に規模としての値であり、蜘蛛の襲来が100年に一度と言う訳ではない。あんなものが頻繁に現れてもらっては非常に困る。
とび丸君は状況を理解したことを伝えるためにありったけのユーモアな感情を顔文字に込めてこう表示する。
「(´・ω・`)」
彼はいつも情報収集をしたあとはこんな顔をする、つまりはこの表情は”すべて理解したよ、さあ今すぐ行こう”と言う意味なのだ。言葉などなくとも精神は繋がれる、こんなことより素晴らしい事は無いだろう。

いつも通り伝わる事のなかった感情に彼はエンジンの中でため息を付きながら全身の機器に魔力を供給する。電気はは永久機関によって作り出される為魔力は実質制御機構の大幅な軽量化にのみ使われる。彼も単純に四肢に指令を下すようなものだと考える。
「(`・ω・´) 」

準備が出来たと彼は表情を浮かべた